飽くなき地景
土地開発で成り上がった烏丸家の嫡男・治道は、家業に興味を持たず、一族の宝刀「無銘」の美しさに魅せられていた。祖父の死後、父の事業によりその刀が愚連隊の手に渡り、治道は取り戻すべく無謀な計画を実行。オリンピック、高度経済成長を経て変貌する東京の裏側で、「無銘」にまつわる事件が連鎖。刀に隠された一族の秘密と愛憎を描く美と血のノワール。
💡 おすすめポイント・見どころ
刀剣が持つ冷厳な美しさと、昭和という時代の欲望が絡み合う歪んだ熱量が、圧倒的な筆力で描き出されます。東京の景観が開発によって無惨に変貌していく過程と、人間の内面が堕落していくさまが見事にシンクロする重厚な構成は鳥肌もの。美と血が交錯するノワールとしての魅力が極限まで高められた、現代文学の到達点とも言うべき鮮烈な傑作です。