息子と狩猟に
💡 山中で出会ったのは、死体を抱えた男だった。
死体を抱えた振り込め詐欺集団のボスと、息子を連れて鹿狩りに来たハンターが、静寂の山中で偶然にも遭遇する。探す、追う、狙う、撃つという極限の生存競争のなかで、狩る者と狩られる者の立場が目まぐるしく入れ替わっていく。人間の深い倫理観を真っ向から問い直し、命の根源的意味に鋭く迫る衝撃の表題作に加え、最も危険な山での極限下の狂気を描いた「K2」の2篇を収録。サバイバル登山家という唯一無二の経歴を持つ著者だからこそ描き得た、圧倒的なリアリティと息を呑む緊張感に満ちた生と死の文学。
💡 おすすめポイント・見どころ
極限の自然環境に放り出された人間の本性は、果たして理性で抑え込めるものなのか。サバイバル登山家である著者が生々しい実感を込めて紡ぎ出す野生と倫理のせめぎ合いは、読む者の文明的な仮面を容赦なく剥ぎ取っていきます。銃声が響き渡る山中で展開される追う者と追われる者の心理戦は、まるで自分自身が冷たい外気に晒されているかのような錯覚を抱かせるほどの臨場感。綺麗事では決して割り切れない命の重みを突きつけられる、魂が揺さぶられるような読書体験をぜひ味わってみてください。