エレガンス
東京大空襲が激化する1945年1月。警視庁写真室の巡査・石川光陽は、戦禍の街並みや事件現場をフィルムに収める任務に就いていた。当時、洋装姿の女性四名が連続で首吊り自殺を遂げる「釣鐘草の衝動」が世間を騒がせていた。ある日、連続首吊り事件の再捜査命令が下り、光陽は鑑識の第一人者・吉川澄一と組むことに。自殺説に傾く光陽に対し、吉川は他殺を疑う。激しさを増す空襲の中でも必死の捜査を続ける二人は、統制下でも美しくありたいと願う女性たちの気高い思いと、事件の奥に潜む真実へと迫っていく。
💡 おすすめポイント・見どころ
戦時下の混沌において、なぜ人は個人の殺人に固執するのかという重い問いが、本書を貫いています。写真室勤務という特異な立場から警視庁の深層に切り込む視点が、物語に得も言われぬ緊張感を与えています。美しくありたいという女性たちの願いと、統制下の社会とのコントラストが美しくも悲しいです。空襲という圧倒的な暴力の前で、個別の罪を糾弾し続ける二人の刑事の姿は、今の時代にこそ強く響きます。歴史の隙間に眠る真実を掘り起こした、深みのある人間ドラマです。